新たな動画形式AV1で、Webの交通状況がよくなる
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Youtube試験機能 Testtube にAV1動画形式があります。これは次世代の新しい圧縮技術です。いま動画配信サイトたちはファイルサイズを減らすためにAV1の採用をしています。
北米のインターネットトラフィックの半分はNetflixとYouTubeで埋まってしまうそうです。これは閲覧しているユーザー数ではなく、通信しているファイルサイズの総量。つまり動画はテキストと比べ物にならないほど大きいことが問題です。
CPU、OS、ブラウザ、動画配信企業が協力
AV1のプロジェクトを進めている Alliance for Open Media の主な参加企業を見ていきましょう。まずは身近な動画配信サービスです。みなさんもどれか利用したことがきっとあります!
- Youtube (Google)
- Netflix
- hulu
- Amazon Prime (Amazon)
- vimeo
Webを見るためにはブラウザが必要です。Webブラウザのみなさん。
- Chrome (Google)
- Safari (Apple :リストには無いが参加しているとされている)
- Firefox (Mozilla)
- Edge (Microsoft)
OS企業のみなさん。
- Windows (Microsoft)
- Android (Google)
- iOS&Mac (Apple :リストには無いが参加しているとされている
ハードウェア関連企業のみなさん。特にAV1を快適に電力効率よく使うためには、ハードウェアレベルの対応が必要です。OSやブラウザなどのソフトウェアががんばっても限界があります。
- Intel
- Nvidia
- AMD
- ARM
- IBM
- CISCO (Firefoxにも採用されたopenH264を公開してくれています)
- REALTEK (カニさんマーク)
ほかにもあらゆる分野の企業が!
- Adobe (クリエイターならみんなもってるPhotoshopやIllustrator)
- VideoLan (ビデオプレーヤー)
ここまで広くIT企業が参加しているアライアンスは、他に見たことがありません。AV1は今も確実に普及の道を歩いていっています。
ロイヤリティフリー
他の有力候補の次世代動画形式にH265があります。ロイヤリティがあり、 製品に採用するときに特許料として金銭を払います。 しかしロイヤリティに関わるパテントプールが3つ以上あり、各グループに特許料を払うお金のしがらみが強いです。 開発する側にとっては大きな課題になります。消費者にとっては動画を見られない端末やブラウザがでてくることになります。
AV1はロイヤリティがないので、特許による金銭問題に巻き込まれません。これは2009年にGoogleによって提唱されたWebMが目指していたものです。VP8やVP9はAV1の前。GoogleはVP10を中止してAV1に技術を注ぎました。 いままでWebMがあまり普及しなかったのは協力企業が少なかったこともあります。
ファイルサイズが小さくても変換が遅い
AV1は画質と圧縮率がすぐれている一方、変換する速度がとても遅いです。AV1を映像にするデコードと、映像をAV1にするエンコードがあります。視聴するとき(デコード)はあまり問題ありませんが、録画するとき(エンコード)が遅いです。画質を保ったまま高い圧縮率でファイルを小さくすることを目指した代償ともいえます…
映像を元にAV1を作る(エンコード)ときの計算量がとても大きく、2019年現在普及している普通の性能のCPUでは、動画時間の約50倍のエンコード時間が必要です。1フレームが1秒かかり、1秒が1分かかるくらいです。このままではとても画面の記録やリアルタイム配信には使えません。
ただしこれはエンコーダー(エンコードするためのソフトウェア)のアルゴリズムが改善すれば多少速くなります。また、CPU企業が専用回路を搭載した製品を売ればハードウェアエンコード・デコードができるようになり、とても速くなります。ハードウェアなのでPCやスマホの買い替えが必要ですが、あとは普及するまで時間の問題です。
AV1未来の予定
おおよその未来の予定表としてAV1 roadmap があります。一体何が予定されているのでしょう?わかりやすい部分を意訳して抜粋します。
- 段階1 ビットストリーム、暗号化の仕様策定。ライセンスと費用の明快。最適化されていないリファレンスコーデックが登場。
- 段階2 ブラウザでプレビューサポート。 より最適化されたリファレンスコーデックが登場。 オープンソースツールはAV1をサポート。
- 段階3 最新ゲーム機 (※ゲーミングPCなどを指す?) でAV1サポート。スマホPCTVなども普及してくる。
- 段階4 すべての消費者向け端末はAV1をサポート。再生、記録、リアルタイム通信。AV2の研究が本格的にはじまる。
2019年1月現在は段階2です。ChromeとFirefoxで AV1のサポートが始まっています。 Youtubeの試験機能をあわせると実際にもう使える状況です。オープンソース動画変換ソフトウェアのffmpegも対応しています。Windowsも拡張機能で対応の動きをみせています。
段階4は2020年以降とされています。そう遠くない未来です。私達は知らず知らずのうちにAV1で通信していきます。長い動画をみてもインターネットの交通状況にあまり影響しなくなるために、みなさんがんばっているのですね。